1999.Ne.1602
事実の概要
XとYは、Xを原作者、Yを作画者として漫画「キャンディ・キャンディ」を連載していたが、Yが、Xの許諾を得ることなく、本件漫画のコマ絵や表紙絵などに書き下ろしを加えて作成したキャンディの絵の各々を原画とするリトグラフ及び絵はがきの作成等を広告会社に許諾したことから、XがY(及び広告会社)に対してこれらの原画につき二次的著作物に対する原著作物の著作者又は共同著作物の著作者としての権利の確認及びこれにもとづく本件原画の複製等の差止を求めて提訴した事件である。 第一審では、原告であるXが勝訴したため、Yが控訴した。
Yの反論
1.本件コマ絵は漫画のストーリーを表しているものではないから、物語原稿に依拠しておらず、二次的著作物ではない。 2.本件表紙絵及び書き下ろし原画は、Yが創作したキャンディのキャラクター原画を複製または翻案したものにあたるから、それ自体が原著作物であり、二次的著作物ではないから、Yがこれにつき単独で著作権を有する。
判決要旨
控訴棄却。 著作権法28条の規定によれば、原著作物の著作権者は、二次的著作物の利用に関して二次的著作物の著作権者とどう内容の権利を有する。 本件連載漫画はXの物語原稿の二次的著作物であるから、Xは本件コマ絵についてストーリー性と無関係に、Yと同一の権利を有し、YはXの同意がなければ権利を行使できない。また、表紙絵および書き下ろしについても、Yはキャンディの絵であると認めており、本件漫画の複製または翻案としてやはり二次的著作物である。
著作権法65条は、共有著作権の行使につき、共有者全員の合意によらなければ行使できないとしつつ(2項)、各共有者は、正当な理由がない限り、合意の成立を妨げることができない(3項)とも定めており、この法意は、漫画の物語作者と絵画作者との関係についても当てはまるものというべきであるから、その活用により妥当な解決を求めることも可能であろう。
メモ
- 原作つきの漫画が二次的著作物であると認定された場合、漫画に起こすにあたって、作画者が独自に創作・付加した部分があるとしても、当該漫画作品全体の中から原著作物の著作物性を利用した部分とそうでない部分とをすべて区別することは困難であるから、全体について原作者に権利が認められる。
- 漫画の絵画著作物としての側面に着目すると、後続するコマに描かれたあるキャラクター絵画は先行する同一キャラクターを描写した絵画の二次的著作物に当たるとされている(最判平成9年7月17日)。
- 原作つき漫画について、共同著作物であると認定された場合は、一定の範囲において作画者が複製をするなどその性質に従った利用行為も許されよう。
- ちなみに高裁は、Yの「漫画家には画風というものがあるのであるから、本件漫画を二次的著作物とされると、似た絵で別の作品を描くことができなくなる」との主張に対し、「同一の絵画作者が描く複数のキャラクター絵画が類似することは容易に考えられるところであるが、あるキャラクター絵画が、他の物語作者の作成に係るストーリーの二次的著作物と評価されるに至った以上、絵画作者は、新たなキャラクター絵画を描くに当たっては、右二次的著作物の翻案にならないように創作的工夫をするのが当然であり、それが不可能であるとする理由を見出すことはできない(例えば、二次的著作物の登場人物と目鼻立ちや髪型などがほとんど同じでも、別の人物という設定で描くことは可能であり、そのときには、右人物の絵の翻案とはならないであろう。)。」と応えた。
- なおYは上告したが、最高裁は控訴審の判断を追認し、上告が棄却され、本事件は確定した。
参考文献
- 別冊ジュリストNo.157 156-157頁
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References:[判例] [キャンディ・キャンディ事件]