「月給百円」サラリーマン
「月給百円」サラリーマン 戦前日本の「平和」な生活
昭和八年頃を中心とした昭和初期の金銭感覚を、数字で検証。
「月給百円」サラリーマンとは、当時の不自由しない程度の生活ができる基準のようなものとして言われていた水準らしい。年収一千万、みたいな感覚ですかねえ。
- 著
- 岩瀬彰?
戦前は本当に「まっ暗」だったのか? 雑誌では出世・昇進の特集が組まれ、借家と持ち家どちらが得かを論じ、名門中学のお受験も過熱。サラリーマン大衆から見た、昭和ヒトケタの素顔。
メモ
- 戦後復興のスローガンは「昭和八年に帰ろう」だったらしい。満州国成立が昭和七年か。世界恐慌の昭和四年のダメージが回復したのが七年くらいですか。
- 長いデフレの明けたあと。という意味で、今との類似点をみるのも面白い。
- はじめにで「戸建ての日本家屋に住み、主に和室で生活し、ふだんの買い物は八百屋や魚屋といった個人商店ですませ、日常の足は公共交通機関に頼る」というのが「昭和ヒトケタから昭和三十年代なかごろのでの日本人の基本的ライフスタイル」と書かれていてショックを受ける。個人商店の専門店はスーパーといっしょくたにモールに入っているものの、そっちのほうが品質も値段もいいし。そのまんま今の生活ですよ。うーむ。やはり都心部では、そうでない生活が多数派なんだろうか。カルチャーギャップが。
- 昭和五年〜十年の東京小売物価指数をだいたい1.0として、大正十一年は1.5(デフレで)。現在の東京都区部物価指数は1800倍。食料・被服は2000倍なので、おおむね2000倍すると現在の感覚となると、大雑把に見なせる。
- 女中さんは月10円。
- 物価と比べて実質所得の伸びは大きく、所得は5000倍とのこと。月給50万円が平均としての話ですが(2004年の総務省調査では世帯あたり月収は平均53万円)。
- 昭和はじめにはサラリーマンとの呼称が定着。就業人口の7%程度。
- 年収1200万は課税下限でもあった(さらに一人100円の扶養控除)。当時は間接税主体だったらしい。
- 子供ができると共働きができなくなりかなり苦しくなりやすかった。さらに旧制中学以上ともなると、学友とのつきあいや見栄もあり、さらに大変。大学となればもう。
- もっとも学費は安い。慶應で120円、早稲田で140円、と換算すると現在の方が数倍高い。大学生活には月に40円が必要とされた。
- 当時は基本的に借家であり、家賃もかなり安い。ただしいまよりもずっと狭いけど。
- 総理、大臣、幹部公務員、国会議員の給与は、物価で換算すると昭和初期よりも数段高くなっている。もっとも日本人の平均給与自体が2.5倍に底上げされていることを考えると、国会議員以外は平均との格差は縮小したと言える。国会議員だけ物価換算してもさらに4倍しないと現在の給与にならず、議員給与が当時より異様に高くなっていると言えるだろう。
- 見習い工や年季奉公的に処遇されている人なんかは、月給5円。今にしていえば月収が一万円ですか。最低賃金制度が導入されたことがどれだけの恩恵だったのかが、よくわかるというものです。
- 当時も、少なくとも東京市には生活保護はあったらしい。生活困窮者として登録すると年末に公的扶助が。カード階級などと呼ばれたそうな。
- 黄金バットのイラストレーターは18歳だったそうで、それに味を占めた紙芝居屋が、子供に絵を描かせたりしたらしい。それで売れた子供には、数え16歳でつきに100円稼いだという加太こうじ?(黄金バットを引き継いで描いた)の話も出ている。戦前の面白いところで、と書かれているが、現在の漫画家を考えれば変わってないと思います。
- 当時も違法な高利貸しがいた。サラリーマン向けの金融もはじまった。借金の借り換え用のサービスが売れに売れたというのも、この時代から。
- 旧制高校の在学者は同年人口の1%を越えない。それだけエリートである。
- 旧制中学の受験加熱。異常な問題が出て内申書重視になり、それがまた信頼できなくなって試験重視に戻り、などあったらしい。
- 女性の最高峰、女高師(今のお茶の水)付属高等女学校は、定員80名に千人以上も押しかける展開。
- のちの創価学会の会長の戸田城聖の時習学館という塾があって、受験勉強。
- 青山会館では毎週日曜に模試があったらしい
- ノートを写して試験に望むような大学生は当時から。仕事に熱心でなく誠意がない、自分から何かしようという気迫がない。そんなことを言われていたのでした。
- アメリカの実務的でディベートなどを含む教育のほうが優れている、などと80年も昔から声高に言われていたのね。
- 「馬にでもわかる微分積分」みたいな本は当時から。
- 早慶戦のフーリガン。徒党を組んで露天を蹴破り、カフェで器物を破壊する。
- 永井荷風が、最近の親は子供のしつけがなっとらん、とか書いている。そらまあ店を走り回ったり、ナイフで壁を叩いたりして、それを止めないという話。
- 慶應の学生が軍事教練を受けたとき、宿舎で乱痴気騒ぎ、周囲の村から子女を連れこみ、注意されると「我々銀座で鍛えた腕だ」と居直る始末。
- 就職が目的でもう就職すればも抜けのから。とか言われるのも、この時代から。
- 昭和15年の文藝春秋でも、最近の大学生はいかに馬鹿かという座談会が。
- 昇給は年一割くらいですか。初任給の2000倍換算では、大企業でもあんがい安いというのが実感です。三井物産の国立大卒で80円、2000倍すると16万円に過ぎませんし。
- 民間では大学間給与格差は撤廃の方向。しかし官庁では官立優先。という流れらしい。私学出身者は判任官以上にはなかなかなれず、差別やイジメも多かったとか。
- ただし司法系は私学が強い。これは差別撤廃が計られていたせいだが、その理由は司法官の方が待遇が悪いため、好景気の時期に人がこなかったという問題があったかららしい。
- バブルの時期には内定者に学費を出したり食事をおごったり海外にいけると約束したり。昔も変らず。
- 保険の外交員をはじめとした歩合制セールスマンが登場するのもこの頃。月収500円とかで自家用車でまわるようなのも登場する。
- 在外勤務手当は結構高額。
- 満洲事変により陸軍の機密費は200万円から1000万円に激増。現在購買価値として200億円相当ですか。太平洋戦争時にはインフレもあったろうけど二億円の機密費。
- 日本フォードの儲けぶりが色々と。工場職員の日当が5円近くですか。
- 喫茶店の開業に千円かあ。
- 軍人の俸給の安いというのがどの程度かというのが、階級別に示されてました。
- 女性の給与格差は当時から。勤続年数の問題はあるとはいえ、男性の半分以下。ただし1970年でも56.1%、1996年でも63.5%に過ぎない。
- 洋服は貧乏臭いというイメージだったのか。まあ実際、和服は当時も、銘仙(着物用の布地)一反10円、あつらえて帯など揃えると一式30円(2000倍換算で6万円)とけっこうな値段でした。
- 昭和八年の文藝春秋にもオフィスワイフ扱いだとかいう言葉がある。当時からそんな言い回しがあったわけね。
- 夜の商売のお値段などもありますが、不景気で素人が大量に参入して価格破壊していたころはともかく、そうでないものは、思ったよりは高額ですね。家計に響く。
- 当時の教師は高給取りである。女性でもまともな給料が出る。ただし男性二人雇う値段で三人雇えるからと女性教師で数を揃えるというような言われ方をしていた。
- 出世のしにくさ、困窮層の混迷、右翼も左翼も政党も尊敬しがたい、そんな世相。
- そして当時の苦しい肉体労働者層は、現状を打破してくれる物を期待し、ファッショを支持する流れに。そして現状を失いたくないサラリーマンも、現状や事態の悪化を静観しているだけであった。
- 戦前のデフレで給与所得者は首を切られない限りは物価の低下を謳歌した。飢え、子を売る(ので売春の価格破壊も起きた)などした農村部にとって、戦争時に疎開してきた都市部の人間へのうらみつらみは大きかったであろうと書かれている。
- 年金もないので退職金で家を建てて貸すことで生計を立てたり。
話題まとめ
- namazu:月給百円 (全文検索結果)
チャットログ
- http://www.cre.jp/writing/IRC/write/2007/02/20070221.html#060000
- 百円は昭和一桁年代(1930年代ごろ)の、まずまずの暮らしができるという水準でした。当時は賃金が安く、少年が工場で働いて月に五円くらいとか、女中(家事手伝い)が月に10円とか、そんな安かったのでした。最低賃金制度がないためでした。食品の値段などは、給料からすると2/5くらいに安くなったわけです。農家の収入はたいへん減ったと思います。
- http://www.cre.jp/writing/IRC/write/2007/02/20070221.html#210000
- 最近の若いもんはと言われた学生や親たち、というのは80年前から変わってません。大学前のガリ版刷りのノート複製業者は、当時誕生したようです。
- http://military.cre.jp/irc/2007/02/20070222.html#020000
- 軍人は戦争になると手当てがついて一気に楽になり、なぜ戦争を辞めないのか、それは手当てがあるからだ、みたいに揶揄されたらしい。
書評
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「月給百円」のサラリーマン―戦前日本の「平和」な生活 (講談社現代新書)(岩瀬 彰)
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